5.手術|側弯症と子供|脊柱側弯症(側湾症)|東京都新宿区・柳沢療法研究所

側弯症と子供

手術

手術についての考え方

手術を勧められたら

それでは、手術に関して考えてみようと思います。手術の詳細に関しては「側弯症と手術」というコラムに記しましたので、そちらを参照していただくとしまして、ここでは手術の周辺の話題を取り上げます。

現在、病院では一般的に弯曲が50度を超えると手術を勧められるようです。癌の告知もさらっと行われる時代です。お医者さんが苦渋に満ちた表情で、などということは無く「50度を超えましたので、夏休みにでも手術しましょう」といったように、あたかも既定路線であるかのごとく告げられるようです。まるでベルトコンベアーに乗せられたように、お医者さんに言われるとうりに手術に同意し、気が付いたら手術の日程まで決まってしまっていた、ということになるのではないでしょうか。

たとえ迷いがあったとしても、病院では、お医者さんの言うことは絶対ですし、その場では断りづらい雰囲気もあるでしょう。勧められた手術を断るということは、その病院と縁を切るということにもなりますからなおさらです。多くの子供達が勧められるままに手術を受けていることでしょう。

決定権は本人と家族にある

ここで申し上げたいのは、手術をするかしないかを決めるのはお医者さんではなくて、あくまでお子さんとご両親であるということをしっかり認識しておいて頂きたいということです。その場では気が動転してじっくり検討する余裕がないでしょうから、「考えさせて下さい」と言って一旦持ち帰り、熟慮する時間を持たれることをお勧めします。

さて、手術をどう考えたらよいかですが、病院では「このまま放っておくとさらに悪化して、将来に呼吸が苦しいとか背中や腰に痛みが出るなどの深刻な症状が出たり、内臓を圧迫して病気になりやすいですよ」といった説明がなされるのではないでしょうか。私も、そのことに関しては異論はありません。そうなるリスクは高いと言えるでしょう。

「それでは、やはり手術をすべきではないか」と思われるかもしれませんが、ちょっとお待ちください。手術自体にも問題がないとは言い切れません。

手術の結果

手術をすることで失うもの

手術自体、失敗するリスクもありますが、ここでは成功するとして考えてみます。まず、お子さんが小学生の場合、手術をすると身長が(座高が)伸びなくなってしまいます。上半身が固定されてしまいますので、生活の質が著しく損なわれます。好きなスポーツも出来なくなってしまうでしょう。手術をすることで失うものも少なくないのです。

歴史の評価が定まっていない

それから、今の手術は一生を保証してくれるものではないであろうということです。鉄筋コンクリートのマンションの耐用年数が100年持つのか50年なのか、歴史の評価が定まっていないのと同様、現在多く行われている側弯症の術式も、まだ歴史の評価が定まっておりません。ですから、30年後はどうなのか、体に入れたチタンの棒が金属疲労を起こして交換が必要になるのは何年後か、背骨に差し込んだボルトが緩んでしまったら再手術が必要か、等々、不具合が起きたらその時に対応を考えるということになるのでしょう。実際に、体に入れた棒が金属疲労を起こしたとか、痛みに耐え切れずせっかく入れた金属の棒を取り出した、といった話も耳にします。

人工股関節などは耐用年数が定まっている

人工股関節などは、耐用年数が定まっているようですので、手術をするタイミングを調節したり再手術の覚悟もしやすいようです。ある80代の女性だったと記憶しますが、人工股関節の手術をすることになった時、お医者さんに、これは15年しか持ちませんと言われ、「先生、それでは困ります、私どうしたらいいでしょう?」と聞いたそうです。その先生は答えに困って、「○○さん、お幾つまで生きられるご予定ですか?」と逆に聞かれたそうです。そのご婦人はハッとして、「ああ、十分ですね」と笑われたという話があります。まあ、百歳以上の長寿者が毎年増え続けている昨今においては、これもあながち笑い話では済まなくなってきているのかもしれませんが。

子供の意見

手術をするなら中学生になってから

それでは、「弯曲が50度付近で、容姿に極端な悪化がなく、側弯症による症状は特に出ていない」という条件で、手術すべきか否かをどう判断したらよいのか考えてみます。私見ですが、出来ることなら中学3年生ぐらいになるまで、手術を待たれた方が良いのではないかと思います。女の子でしたら早熟ですので、この頃にはほぼ成人の身長が確保できるでしょう。手術の難易度も、小学生と中学生ではさほど違いはないでしょうから。もちろん、その間に急激に悪化しないとは言い切れませんから、注意深く見守ってあげる必要はあるでしょう。

子供の感じる手術への恐怖

ユーチューブで側弯症の手術中の映像を見たことがあります。背骨が剥き出しになっていて、大量に出血していて、見ていて気持ちのいいものではありませんでした。手術室の中で撮影されたものですから、手術のスタッフが撮影したものなのでしょうが、この様な映像を流す意味があるのだろうか、いたずらに恐怖心をあおるだけではないかと思いました。

そんな映像を見たのでしょうか、ある小学生の女の子が「鯵の開きにされちゃうよう」と冗談のように言っていたのを時々思い出します。それが冗談では済まされない、不安と、悲痛な嘆きを含んだ声音であったことが忘れられません。

本人の意志を尊重する

小学生のうちは親の意思に従わざるを得ないのが実情です。家族で話し合うと言っても、お子さんが小学生では実質親御さんか決めることになり、お子さんの意思は尊重されないでしょう。お子さんが小さくて自分の意見が反映されなかった場合には、どちらに決めたにしても、あとで子供に恨まれかねません。

これが中学も3年生ぐらいになると、本人も自分の意思を伝えられるようになって親御さんもお子さんの考えも無視できなくなります。お子さんが成長して自分の意思をはっきりと主張できるようになってからでしたら、選択した結果がどうあれ、受け入れることができるでしょう。

様々な実例

手術の当日にドタキャンした女子中学生

ある高校生の女の子は、中学3年生の時に手術する予定になっていたのですが、手術の当日になってドタキャンしたというのです。先生も看護士さんも、準備万端整えて待ち構えていたところだったと言いますから、言うならば手術室から逃げ出したようなものです。中学も3年生ぐらいになると、このようなツワモノも出てきます。

自ら手術を決意した女子高生

以前、高校生だったと思いますが、自ら手術を決断した女の子がいました。その子の側湾は、腰椎部分の側弯症で、弯曲はそれほど強くなかったのですが、ねじれが強く、伸ばしてもまた次に来た時には元に戻っているといったたちの悪いものだったと記憶します。
継続して治療を続ければ何とかなるとは思いましたが、本人はもどかしく感じたのでしょう。自らの意思で手術すると決められました。

諦めずに結束する母娘

最近、大学生になったばかりの女の子とそのお母さんがいらしていますが、娘さんが側弯症で何と80度超とのことでした。当然、とっくに手術を受けられていても不思議ではない重度の側弯症です。それでも「手術しか方法が無いなんて納得できない!」と手術を拒み続け、何か他に手段があるはずだと模索し続けて私の所へ来られたそうです。

そのお母さんがあまりに冷静で落ち着いておられるのが不思議に思えた私は、「お母さんはご立派ですねえ、たいていのお母さんは、おろおろとされいる方が多い中で、どっしりと構えていらっしゃる」と申し上げたところ、「いろいろな所へ行きましたもの、もう慣れっこです」とおっしゃいました。「いろいろな所へ行っていろいろな治療を受け、いろいろな体操も教わりましたが、何をやっても何一つ変わりませんでした」とおっしゃるそのお顔には、悲壮感は微塵も無く、笑顔さえ見られました。「必ず何か方法があるはずだ」という強い信念のもとに決してあきらめず、母娘が結束して前を向いている様子に私は感銘を受けました。

病院の意向

病院は手術をしたがっている?

それでは、「弯曲が50度付近で、容姿に極端な悪化がなく、側弯症による症状は特に出ていない」という条件で、手術すべきか否かをどう判断したらよいのか考えてみます。私見ですが、出来ることなら中学3年生ぐらいになるまで、手術を待たれた方が良いのではないかと思います。女の子でしたら早熟ですので、この頃にはほぼ成人の身長が確保できるでしょう。手術の難易度も、小学生と中学生ではさほど違いはないでしょうから。もちろん、その間に急激に悪化しないとは言い切れませんから、注意深く見守ってあげる必要はあるでしょう。

近所の整形外科では30数度と言われたのに、大学病院では50度ですと言われ、手術を勧められたという例にたびたび出会います。私が触診してみても、いくらなんでも50度はないだろう、近所の整形外科の度数の方が正しいのではと思えるのです。これはどう考えたらよいのでしょう。

手術を急ぐ理由の正否

これはある患者さんの例ですが、側弯症の専門病院で「40度」と言われ、手術を勧められたそうです。その先生が言うには「今手術した方が、体に入れる金属の棒が短くて済むから」ということだったそうです。これはどう考えたらよいでしょうか。

私の所には、過去に手術をされた方もいらっしゃいます。その方々の来院の動機は、「金属の棒が届いていない部分が大きく曲がってきてしまった」というものがほとんどです。こうなると再手術が必要になりますが、それは何とか避けたい、他の手段がないものかといろいろ探された結果の来院です。ですから、必ずしも体に入れる金属の棒は短いほど良いとは言い切れないものがあるのです。

看護師の証言

もう一つ、決定的と思える証言に出会いました。最近側弯症で私の所にいらっしゃった若い女性ですが、お話を伺ってみると、その方はある大きな総合病院の看護師さんだそうで、なんとその病院の整形外科には、側弯症専門の医師がいらっしゃるとのことです。
そこで私は「どうしてそこで診てもらわないのですか?」と伺ってみました。その方は、友人の看護師がそこに勤務しているので、その友人に相談してみたのだそうです。そうしたら、「うちの先生は、切らなくてもいい人まで切るから、やめた方がいいよ」と反対されたというのです。これは実話です。

医師の立場

側弯症の専門病院や、大学病院のお医者さんの立場に立って考えてみますと、大勢の側弯症の患者さんが、「この病院なら何とかしてもらえるのではないか」と期待を抱いてやって来るわけです。それを、何もしてあげないで帰したのでは、専門病院、大学病院の、そして側弯症専門医としての自分の名が廃ります。何度いらしゃっても、角度が満たないだけで何もしてあげられず、手をこまねいていては、患者さんは、この病院も同じかとがっかりされるでしょうし、自分には、手術して治してあげられる腕があるのにと、ストレスもたまることでしょう。してあげられることは唯一手術のみですから、多少早かろうが何であろうが、片っ端から手術をして治してあげたい。という気持ちに駆られたとしても、あながち不思議ではないと思います。

不要な手術は無用

ですが、患者にしてみれば、背骨の手術をするということは、その後の人生を左右しかねないほどの大きな問題です。しなくともいい手術までされてしまってはたまったものではありません。
「(手術が成功して)癌は治りました。でも、患者は死にました。」というブラックジョークがあります。「(手術が成功して)側弯症は治りました。でも、背骨は曲がらなくなりました。」というのはジョークではないのです。

手術の判断に際して

セカンドオピニオン

それでは、近所の整形外科で測ってもらった角度と、専門病院や大学病院で測ってもらった角度に大きな差があった場合、どう考えたらいいのでしょう。私は、セカンドオピニオンを求めてみられることをお勧めします。近所の整形外科の先生か、かかりつけの内科の先生にお願いすれば紹介状を書いてもらえると思います。ただし、その場合に注意していただきたいことが2点あります。

  1. レントゲン写真は持参しない
    1点目は、どこどこの病院で手術を勧められたと、レントゲン写真を持参しないで、初めて伺ったと言ってレントゲンを撮って角度を測りなおしてもらうことです。レントゲン写真を持参して、50度超と角度が記入されている写真を見せられれば、どの医師でも同様の意見を述べるでしょうから。
  2. 違う医局の系列の医師のいる病院を訪ねる
    2点目は、違う大学病院の系列の医師のいる病院を受診されることです。これは私のある患者さんの例ですが、セカンドオピニオンを求めていくつかの病院を回り、最後に行った大学病院の医師に、「これまで貴方の行かれた病院の医師は皆うちの医局の仲間です。ですから皆同じ意見になるでしょう」と言われたというのです。ですから、病院を選ぶ時、そこの側弯症の専門医が、どこの大学病院からいらしている方なのかを問い合わせてから行かれることをお勧めします。
「手術をしない近くの整形外科」へ

単にどちらの言う角度が正しいのかを知りたいのであれば、無理に大学病院に行かないで、むしろ手術をしない近くの整形外科の先生の方が良いように私は思います。手術をすることによる利害が絡まない、中立の立場で測ってもらえると思いますので。

親御さんの「拒絶反応」

私の所にいらしている大人の側弯症の患者さんの中には、子供の頃手術を勧められた、とおっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。これらの方々に、「なぜ手術をしなかったのですか?」とお訊ねすると、たいていの方は、ご両親のどちらかが強く反対なさったとおっしゃいます。その理由は、「背骨を手術するなんてとんでもない」という失敗を恐れてのものや、「娘の体にメスを入れさせたくない」といった理由がほとんどで、大概の場合はその時点で将来何とかなるといった見通しがあったわけではないようです。

それから大人になって、背中や腰の痛みに悩まされるようになったり、将来が不安になって、子供の頃には無かったインターネットで調べて「改善させることができるかもしれない」と知って私の所にいらしゃったのです。

「症状が出た時に手術を考える」という選択

それはさておき、現在は大人の側弯症にも普通に手術をするようになってきました。ですから、しようと思えば幾つになっても手術してもらえます。もっとも、骨粗しょう症が進む70代の方は手術を断る病院も多いようですが。

私の知っている中で、側弯症の手術をされた最高齢の方は、79歳のご婦人です。その方は、私の所に通っていらっしゃる50代の女性のお母様で、遠方に住んでいらっしゃるので、とても私の所まで伺えないと伺っていました。しかし、腰痛に悩まれたことから、つい最近地元の病院で手術に踏み切られたそうです。大変な手術であったそうですが、手術は成功されたとのことでした。予後の状況についてはまだ伺っておりませんが、このような高齢の方でも手術をしてくれる病院もあるのだと知った次第です。

ですから、単に拒絶反応のみで手術を断るのではなく、症状のない今はとりあえず手術をしないでおいて、大人になって深刻な症状が出たらその時に手術を検討するといった将来を見通した上で手術を断るという選択も出来る時代になってきたのではないかと思います。

 

以上、手術を勧められたらどう考えたらよいかというテーマでいろいろ記してみました。手術をされるにしろ断るにしろ、ご決断をされる際の参考にしていただけたら幸いです。

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